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仙台高等裁判所 昭和55年(ネ)481号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一請求原因1、2、4の事実及び同5の(一)ないし(三)の事実並びに被控訴人会社の社員である高橋久之亟外五名が、本件社員総会開催期日前の昭和五三年三月二三日各人がそれぞれ保有する出資持分二〇口の中から一九口宛(右六名分の出資持分中合計一一四口)を同社員である長崎昌夫に譲渡したこと(したがつて、同日に現在における右高橋久之亟外五名の出資口数は合計六口になつたこと)は、当事者間に争いがない。

二ところで、有限会社法三七条一項、三項による社員総会の招集手続の有効要件として少数社員が保有すべき出資口数要件は、当該総会の招集が裁判上行使された場合であつても、裁判所の総会招集許可の裁判が確定する時までではなく、当該総会が終了する時にも満たしていることを必要とすると解すべきである。何故ならば、右出資口数要件は、少数社員権行使のための最低限の資格として、及び少数社員による総会招集権行使の濫用防止の目的から要求されるものであるのに対し、総会招集許可の裁判は総会成立に至るまでの手続の一環に過ぎないし、もし少数社員が該裁判確定時まで法定の出資口数を保有すれば足り、その後の出資口数が法定数を下廻つても総会の成立に影響がないとすれば、一時的に他から法定の出資口数を借り集めることによつて総会を招集することを認める結果となり、また、少数社員の結束が脱落者の出現によつて失われた場合にまで総会の招集を許す結果となり、不当だからである。

そうすると、本件総会開催時には、少数社員権を行使し、有限会社法三七条三項により本件総会を招集した前記高橋久之亟外五名の出資口数が、被控訴人会社の資本の一〇分の一以下であつたことは明白であるから、本件総会の招集手続は、同項に抵触してなされたものといわなければならない。被控訴人は、前記高橋久之亟外五名は控訴人ら健訟濫訴派に対抗するため、その出資持分各二〇口の中から一九口宛前記長崎昌夫に信託的に譲渡したもので、実質的に出資持分を移転したものでないから、有限会社法三七条一項、三項の出資口数要件を欠いたことにはならないと主張するが、右要件が設けられている趣旨に照らし、少数社員権行使のため保有すべき法定数以上の出資持分は、名義上も当該株主に帰属していることが必要であり、他に信託的に譲度したものを含めることは許されないから、被控訴人の右主張は理由がない。

三そこで、被控訴人の主張3(二)の抗弁について判断する。

<証拠>を総合すると、

1 被控訴人会社は、同会社に不満を抱いている控訴人からの回答要求、帳簿の閲覧請求、訴訟等に悩まされ、社員間に動揺が見られたところから、控訴人の行動に反対する社員らは臨時株主総会を招集して控訴人の動きを封じようとし、その有志のうち前記高橋久之亟外五名が代表となり、有限会社法三七条の少数社員権に基づき、取締役及び監査役全員の解任並びに後任取締役及び監査役の選任を審議事項とする臨時総会の開催を求め、請求原因5(一)ないし(三)(右請求原因事実は当事者間に争いがない。)の経過により、本件総会が開催された。

2 本件総会開催時における被控訴人会社の社員数は三二名、その議決権数は八四〇個であつたが、控訴人一派に反対する社員らは前記高橋久之亟ら二八名であり、その多くは、本件総会の数日前各人の出資口数中一口ないし数口を自己に留保し、残り全部を前記長崎昌夫に信託的に譲渡し、議決権行使に当り控訴人一派を圧倒しようとした。

3 本件総会における現実の出席者は二八名、その議決権数は七一〇個であり、他の四名は委任状出席であつた。総会の冒頭議決権数確定のため審査が行われ、控訴人は自己の議決数を二三七個と申告したが、そのうち一三〇個は会社代表者等において権利を有するもので控訴人が出資持分の譲渡を受け得るはずがないという理由で否認され、一〇七個しか認められなかつた(その後昭和五三年五月二八日に開催された第八回定時社員総会、昭和五四年五月二七日に開催された第九回定時社員総会においても、控訴人の出資口数は一〇七口としてしか計算されていない。)。しかし、右一三〇個の議決権が右いずれの側に認められようとも、本件総会は全員出席総会となる。

4 右のように出席者及びその議決権数が確定され、取締役及び監査役解任決議に入る前に、議長から取締役及び監査役全員から辞任届が提出されていることが明らかにされ、その解任決議は不要となつたため、直ちに、後任取締役及び監査役選任手続に入り、投票の結果高橋久之亟、長崎昌夫、白沢武二、立花光則はいずれも議決五八〇個の賛成をもつて取締役に、小森隆孝、伊藤昭男はいずれも同五六〇個の賛成をもつて監査役にそれぞれ選任された。以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右に認定した事実関係に徴すると、被控訴人会社の社員全員は、本件総会の招集手続に瑕疵があつても、会議進行中取締役及び監査役全員の辞任が明らかにされた時、後任の取締役及び監査役の選任手続をなすべき総会として、その招集手続を省略してこれを開催することに同意し、その選任手続に入り、投票のうえ本件決議をしたものと解することができ、かつ、右投票数の計算につき、控訴人主張のような控訴人及び他の社員の出資持分確定の誤りに起因する計算違いは認められないから、本件決議は有限会社法三八条の二の規定に従つて成立したことが認められる。

そうすると、本件決議は、有限会社法三八条の規定に従い適法に成立した総会においてなされたものであり、他に違法事由の認められない本件においては、これを取消すべき瑕疵は存しないというべきである。

四以上の次第であるから、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は結論において正当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴はこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(中島恒 石川良雄 宮村素之)

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